約 730,086 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2387.html
キズナのキセキ ACT1-6「招かれざる客」 ◆ 店の入り口から入ってきたその客に、最初に気が付いたのは、安藤智也だった。 火曜日の夕方、学校帰りのゲームセンターは、安藤にとってもはや習慣である。 平日は安藤とLAシスターズ、そして大城というメンバーが集う。 そう言えば、この週末は、遠野と菜々子が来なかった。実に珍しい。 大城が二人と連絡を取ろうとしたが、出来なかったという。 何かイヤな予感がする、と表情を暗くしたのは八重樫美緒であったが、 「二人で遠くにデートにでも行ってるんじゃない?」 などと、江崎梨々香は明るく言った。 少し心配ではあるが、二人にもそれぞれ事情があるのだろう。安藤はそう思った。 ゲームセンターは今日も盛況だ。 安藤が所属しているチームのメンバーも、こぞってバトルをしている。 一戦終えた安藤は、いつも遠野が定位置にしている壁に背をつけた。 隣には大城大介がいる。 彼は安藤とはまったく違うタイプの男で、歳も上であったが、なぜか気を許せる人物だった。 二人並んで缶コーヒーを飲みながら、バトルを観戦している。 そんな時、くだんの客が入ってきたのに、安藤は気が付いた。 落ち着いた色のコートと、えんじ色のベレー帽を身につけた女性。 かすかな微笑を浮かべたその美貌に、安藤でさえ、はっとさせられる。 手には、黒鉄色のアタッシュケース。神姫マスターか。 彼女はゆっくりとこちらへやってくる。 「大城さん、今入ってきた、あのお客……」 「ん? どの客だ……って、うほ!」 大城はあっと言う間に相好を崩した。この男、美女に目がない。 安藤は思わずため息をついた。大城に注意を促したのは、目をハートにさせるためではないのだが。 その女性を安藤は見たことがなかった。大城は知っているかと思って声をかけたのだが、 「何かお困りですか、お嬢さん?」 などと妙に格好つけた声で話しかけているところを見ると、どうやら知らない顔らしい。 その女性は、安藤たちの近くまでやってくると、うっすらと微笑んで、言った。 「ここに、久住菜々子は来ている?」 予想外の問いに、安藤も大城も、一瞬反応できない。 二人は顔を見合わせた後、大城が答えた。 「菜々子ちゃん? 今日は……というか、ここんとこ来てねえけど……」 「そう……残念ね」 「君は、菜々子ちゃんの知り合いかい?」 「ああ、ごめんなさい……わたしは桐島あおい。菜々子の昔なじみです」 名乗りながら、鮮やかに微笑む。 安藤はその笑顔に、一瞬、違和感を感じた。 なんだろう。おかしなところなど、何もないはずなのに。 「俺は大城大介」 「安藤智也です。菜々子さんとはチームメイトです、二人とも」 「チーム? あの子が?」 「そうさ! 久住菜々子所属のチーム『アクセル』と言えば、ここらじゃちょっとは知れたチームなんだぜ?」 桐島あおいと名乗った彼女は、とても驚いた様子だった。 菜々子さんがチームを組むことがそんなに意外だろうか。菜々子は社交的な性格だし、チーム結成を言い出したのも菜々子の方からだと聞いている。 昔の菜々子は、もっと違う性格だったのかな、などと安藤は思った。 「チーム『アクセル』ね……結構強いの?」 「そりゃあ強いさ。『エトランゼ』のミスティは説明はいらないよな。俺の虎実はこのゲーセンじゃランキングバトルのチャンプだし、この安藤とオルフェだって、バトル歴は浅いけど、結構な実力なんだぜ?」 「へえ……」 「まあ……チームリーダーが勝負にあんまりこだわらないってのが、困りものなんだが」 「勝負にこだわらない……?」 「ああ。遠野って男なんだが、驚くほど勝負に欲がないんだよなぁ。試合内容重視っつーか」 そのとき、あおいがまた、鮮やかに微笑んだ。 「だったら、わたしとバトルしません?」 「君も神姫マスターなのか?」 「ええ、もちろん。菜々子と知り合ったのも、武装神姫が縁なの」 「そりゃいい。菜々子ちゃんの昔なじみなら大歓迎だぜ」 しかも美人だし、と大城は付け加えた。安藤は苦笑する。大城さんは相変わらずだ。 ここで、大城の肩にいて話を聞いていたティグリース型の神姫が、桐島あおいに呼びかけた。 「おい、あんた……桐島あおい、だったっけか?」 「ええ。なに?」 「バトルすんのはかまわないけど、あんたの神姫は?」 「ああ……そうね、先に紹介するわ。出てきて、マグダレーナ」 あおいはアタッシュケースを取り出すと、取っ手のボタンを押した。 重い音を立ててケースが開く。 虎実は見た。 そこに佇むのは、闇のように真っ黒な神姫だった。 「……ハーモニーグレイス?」 塗装が微妙に違っているが、修道女をモチーフにした武装神姫・ハーモニーグレイス型に間違いない。 不機嫌そうな表情で、虎実をねめつけている。 「敵と慣れ合う気は、さらさらないのだがな」 ひどくしわがれた、老婆のような声。 なんだ、こいつは……。 通常のハーモニーグレイス型のような明るさ、愛想の良さなど、まるでない。 虎実は得体の知れない不気味さを、マグダレーナと名乗る神姫から感じていた。 虎実は警戒する。しかし、 「こんな美人とお近付きになれるとは、武装神姫様々だなぁ」 彼女のマスターはまったく緊張感がない。 虎実は怒り狂いたいのをこらえつつ、大城にだけ聞こえる声で囁いた。 「アニキ」 「何だよ、また妬いてんのか?」 「ばっ……! ちげーよ! ……まさかアニキ、相手を見くびってないだろーな?」 「まさか。菜々子ちゃんの昔なじみってんなら、気が抜ける相手じゃねーっての」 鼻歌交じりでそう言う大城の言葉は、まったく説得力がない。 ハーモニーグレイスと言えば、チームの少女たちの神姫と同様、武装を簡略化して低価格化を実現したライトアーマー・シリーズの一体だ。 戦闘力自体は、フル装備の武装神姫がおそれるほどではないが、ゲームセンターで戦うときには、油断は出来ない。 どんなカスタマイズが施されていても、おかしくはないのだ。素体がライトアーマー・シリーズでも、武装が要塞並ということだって、ないとは言えない。 だが、マグダレーナというこの黒い神姫の不気味さは、そんなことではないような気がする。だが、具体的に言葉に出来ない。 我がアニキのなんたる空気の読めなさ。 虎実はため息をついた。 ◆ ステージは「廃墟」が選択された。 虎実にとっては得意のステージである。 ティアやミスティと、何度もここで戦った。一番経験のあるステージである。 虎実は、高速タイプに組み替えた「ファスト・オーガ」に乗っている。 このファスト・オーガを手足のように操る操縦技術、それこそが虎実最大の武器であった。 虎実は砂埃舞うメインストリートを疾駆している。 相手がノーマルのハーモニーグレイス型なら、ライトアーマー・クラスの軽装備のはずだ。その場合、路地などに隠れながら様子をうかがうのが定石である。 それをおびき出すために、わざと目立つように走っているのだ。 小細工は虎実と大城が得意とするところではない。 自らを囮にして、一気に勝負を決める。 虎実は前方を注視する。 いた。 あの黒く不気味な修道女型。 特別な装備は、腰を取り巻くスカートアーマーくらいだろうか。手にしたキャンドルと十字架型のマシンガンは、ハーモニーグレイス型のデフォルト装備である。 虎実は気にせず、アクセルをふかし、一気にマグダレーナに迫った。 機首に取り付けたバルカン砲を撃つ。 マグダレーナがさらりとした動きでかわす。 しかし、砂煙と銃痕で動きは制限された。 ファスト・オーガでそのまま挽き潰すべく、突っ込む。 手応えは、ない。 マグダレーナは虎実の突撃を、紙一重でかわしていた。 だが、甘い。 マグダレーナの目前を通り過ぎた刹那、虎実は上体を上げ、ファスト・オーガの機首を持ち上げると、突進の勢いを回転に変えた。 フローティングユニットを軸に、コマのように回転する。 「吹き飛べっ!!」 バットのように振り出された機首が、マグダレーナに迫る。 虎実は確信する。この奇襲はかわせない。 だが、マグダレーナには慌てた様子もない。 ファスト・オーガの一撃が迫る。 「こうか?」 一言発し、マグダレーナは地面に身体を投げ出すように身体を傾けた。 地面スレスレまで身体を倒し込みながら、スライドするように飛ぶ。 頭上を、エアバイクの機首が駆け抜けた。 「なっ……ばかなっ!!」 再びファスト・オーガの機首が回ってきたときには、マグダレーナはその回転範囲から逃れていた。 今の回避方法を、虎実は知っている。 ビッテリーターン。 スキーのターン技術の一つだ。 ティアと初めて対戦したときに、彼女がかわすのに使った。 その技を、どうしてこの神姫が使う!? 得意の奇襲がかわされたことより、そのことに驚きを隠せない。 回転を立て直し、虎実はマグダレーナと対峙する。 マグダレーナはすでに立ち上がっていた。口元に不気味な笑みを浮かべて。 虎実は寒気に襲われた。 本当に、得体が知れない。 そんな思いを振り払うべく、虎実はバルカン砲を放った。 「おおおおおおぉぉっ!!」 吼える。 近距離からの弾丸の雨。ライトアーマー・クラスの装甲では持ちこたえることは不可能だ。 はたして、マグダレーナは宙にいた。 一挙動でジャンプし、砂煙から飛び出して、虎実の頭上を越えようとする。 マグダレーナは空中で虎実を狙い撃った。 しかし、虎実もそれは察知している。 その場でファスト・オーガを最小半径でターンさせ、射線をはずした。間髪入れず、アクセル・オン、エアバイクをダッシュさせる。 狙いは、マグダレーナの着地点。 黒い修道女は、ふわり、と宙を舞い、着地した。 やはり、あのスカートアーマーは装甲だけではない、特殊な装備のようだ。 再び向かい合う両者。 虎実も走りながら、大剣「朱天」を抜いた。身の丈ほどもあるこの剣は、ティグリース型のデフォルト装備である。それを片手で軽々と振る。 視界の中のマグダレーナが迫る。 彼女もまた、手にしたキャンドルを武器に選んだ。短い柄のついた三本のキャンドルの先から、光の刃が現れる。ライトセイバーの三つ叉槍。 「だあああああぁぁぁっ!!」 虎実の気合い声に対し、マグダレーナは無言。 高速ですれ違う瞬間、二人は同時におのが武器を振り抜いた。 はたして、虎実の大剣に手応えはなく、ファスト・オーガはフローティングユニットの接続部から真っ二つに断たれていた。 「う、わあああぁっ!?」 動力を失い、虎実を乗せたファスト・オーガの前半分がつんのめるように地面に接触した。 転倒し、虎実は地面に投げ出される。 「くそ……」 「朱天」を手に立ち上がろうとしたその時、黒い影が立ちはだかる。 マグダレーナ。 その闇のように黒い影は死神のように、虎実の瞳に映った。 三つ叉のビームランスを構えている。 それでも、虎実が立ち上がろうと勇気を振り絞った。 しかし。 「その魂、しばらく預かるぞ」 ためらいもなく、三つ叉槍が振り下ろされる。 マグダレーナの一撃は、虎実の身体を貫いた。 「ぐあああぁぁ……っ! ……あ……」 虎実の瞳から光が消える。身体から力が抜け、地に伏した。 バトルはマグダレーナの勝利で幕を閉じた。 この時は、まだ誰も、異常に気が付いてはいなかった。 ◆ 「虎実!? おい、虎実、どうした! おいっ!」 大城の必死の呼びかけにも、虎実が応じる気配はなかった。光の消えた瞳を開いたまま、大城の手のひらの上で、力なく横たわるばかりだ。 試合終了後。 アクセスポッドが開いても、虎実は身じろぎ一つしなかった。 大城は不審に思う。いつもなら、試合終了後に真っ先に飛び出してきて、口げんかが始まるのが常だったからだ。 大城はアクセスポッドをのぞき込む。 虎実はいる。 だが、何を言っても、触れても、何の反応も示さない。ただの人形になってしまったかのように。 大城は筐体の向こうを睨みつける。 えんじのベレーをかぶった神姫マスター。 桐島あおいは、穏やかな微笑みを浮かべていた。 「おい、お前……虎実に何をした!?」 大城の大きな声を聞きつけて、周りから神姫マスターたちが集まってくる。 それでも、桐島あおいは慌てる様子を見せない。 「大丈夫。虎実のAIを少し借りただけ。目的を果たしさえすれば、すぐに返すわ」 「AIを、借りた……?」 その不思議な物言いに、大城は首を傾げる。 神姫のAIを借り出すことなど、可能なのか……。 いや、一つ思い当たる節がある。 「AI移送接続ソフト、か……?」 「よく分かったわね」 「なんだって……そんなことをしやがるっ!?」 知らないはずがない。あの時のことを、忘れられるはずがない。 以前、このゲームセンターで、同じようにAI移送接続ソフトを使い、遠野とティアを大ピンチに陥れた奴がいた。 神姫のAIを取り出し、別のサーバーへと送る一種のウィルスソフト。それがAI移送接続ソフトだ。 もちろん、あの事件以来、そうしたウィルスソフトへの対策はしている。 しかし、今のバトルでは、そんな対策も意味を成していなかったようだ。 怒りに猛る大城は、そのことに気付く余裕もない。 拳を握りしめ、回答次第では殴りかからんと、怒りにたぎっている。 あおいは涼しい顔で、答えた。 「わたしのお願いを聞いてもらいたかったの。それを聞き届けてくれれば、虎実のAIはすぐに返すわ」 「なんだとぉ……?」 大城は、桐島あおいに足早に歩み寄ると、強引に胸ぐら掴もうと手を伸ばす。 「そこまでだ、大城大介」 しわがれた声が警告を発した。 あおいの肩にいる神姫が、こちらに向けてマシンガンを構えている。 大城は動けなくなった。 目を見開いて、銃口を見つめるしかできない。 まさか、神姫が人間に銃を向けるなど……常識ではあり得なかった。 大城の背中に冷たい汗が流れてゆく。 「あおいに手を出したら、貴様もただでは済まん」 「イリーガルかよ……」 「どうとでも呼ぶがいい。あおいの話を聞かぬ限り、虎実のAIは戻らんぞ」 あろうことか、この神姫は自らイリーガル……違法神姫であることを肯定した。 百戦錬磨の大城さえも、向けられる銃口にひるみつつあったその時、 「あんた、菜々子さんの師匠だろ? それなのに、イリーガルなんか使って……恥ずかしくねぇのかよ!」 果敢に声を発した少女がいた。 背が高く、少年のような雰囲気の美少女は、園田有希。久住菜々子の弟子を自称している。 「桐島あおいさん……あんたのことは、菜々子さんから聞いてた。菜々子さんの目標とする神姫マスターだって……。 なのに、イリーガルを自分の神姫にして、ウィルスソフトを使ってバトルして……何やってんだ、あんたは!!」 「元気がいいわね、菜々子の弟子は」 「んなこた、どーでもいい! 虎実のAIを返せよ!」 「いいわよ」 「へ?」 有希は間抜けな顔であおいを見た。 桐島あおいは、有希の剣幕にも動じず、柔らかな笑みを浮かべるばかりだ。 「わたしは何も、虎実のAIを消したいわけじゃないわ。なんだったら、わたしたちと勝負してみる? あなたが勝てば、すぐに虎実のAIを返してもいい」 「おもしれー」 腕まくりする有希のその腕を、八重樫美緒が押さえた。 「待って。冷静になりなさい。負けたら、カイのAIだって奪われるかも知れないわ」 「黙ってろよ、美緒。自分の師匠がこんなんじゃ、菜々子さんだってたまらねーだろ。あの人に知れる前に、あたしがオトシマエつけて……」 「あら、菜々子ならもう知ってるわよ」 口を挟んできたあおいの顔を、有希と美緒は見つめた。 「このあいだ、あの子を負かしたばかりだもの」 「なっ……!?」 チームのメンバーだけでなく、その会話を聞いていた『ノーザンクロス』の常連は皆絶句した。 『エトランゼ』のミスティはこのゲーセンで圧倒的実力を誇る神姫として認知されている。 その彼女が敗れた。 ということは、このゲーセンに集う神姫では、マグダレーナにかなわない、ということではないか。 マグダレーナは周囲の様子を見ながら一笑する。 「ミスティが敗れたと知って、気後れしたか?」 「く……」 「ならば、二対一でもかまわんぞ?」 「……それは本気?」 有希の背後から声がした。チームメイトの蓼科涼子である。 涼子は有希の隣に並び、マグダレーナを睨む。 その鋭い視線を、マグダレーナは悠々と受け流した。 「本気だとも。二人がかりで来るがいい」 「その言葉、後悔させてあげるわ」 「ちょっと……涼子!?」 慌てたのは美緒である。 有希だけでなく涼子まで、危険なバトルに挑もうというのか。 「あなた、わかってるの? 涼姫だってAIを奪われるかも知れないのよ?」 「かもしれない、でしょう? 涼姫とカイのコンビなら、虎実にだって……『エトランゼ』のミスティにだって、後れは取らない。美緒だって分かってるはずだわ」 そう言って、涼子は有希と視線を合わせた。二人は不適に笑い合う。 いつもはもっとも身近なライバル同士だが、コンビを組めば『ノーザンクロス』でも指折りの実力になっていた。 それは美緒もよく知っている。 しかし、それでも危険な賭けだと思う。 美緒はどうしても、マグダレーナという黒い神姫から警戒を解くことが出来ないでいた。 あの神姫には何かある。遠野さんなら、今のバトルを見たら分かっただろうか。 「どうした、話はまとまったか?」 老婆のようにしわがれた声が呼ぶ。 美緒は有希の腕から手を離した。 有希と涼子は頷くと、黒い神姫とそのマスターに向かい合った。 「虎実は返してもらうぜ、マグダレーナ」 「わたしたち二人を相手に、勝てると思わないことね」 自信たっぷりの二人に、美緒はただ、無事を祈るだけしかできなかった。 ◆ 大城はマグダレーナに、もはや畏怖すら感じていた。 バトルが始まってもう五分以上が経過していたが、二人の神姫を相手に、マグダレーナはダメージどころかかすり傷一つ負わずに、二人の攻撃をさばき続けていた。 園田有希のカイは、ストラーフ装備に加え、ヴァローナの鎌を持った重装備。 蓼科涼子の涼姫は、装備こそライトアーマー級だが、ワイヤーを使ったアクションは独特の機動で、初見の相手なら翻弄されることは確実だ。 対して、桐島あおいのマグダレーナは、先ほどと同様、スカートアーマー以外はノーマルのハーモニーグレイス型と変わらない軽装備に見える。 涼姫が翻弄し、カイがプレッシャーを与える。 この二人の組み合わせは、ティアとミスティのコンビによく似ていた。 二人の息が合っていれば、並の神姫では太刀打ちできないほどの実力が発揮される。 ましてやこのバトルは二対一。カイ&涼姫のコンビが圧倒的に有利だ。 しかし、マグダレーナは悠然とバトルに望んでいる。 マグダレーナは、攻撃を受け止めることをあまりしない。ほとんどかわしてみせる。 ある意味、ティアに近い戦い方と言えるが、その様子はまるで違っているように、大城には思えた。 ティアは攻撃を察知し、持ち前の機動力で回避する。 マグダレーナの動き出しはティアよりも早い。余裕を持って動き、攻撃範囲外へするり、と移動する。 まるで、何の攻撃が来るのか、事前に察知しているかのように……。 カイがマグダレーナを攻める。得意の近接攻撃は、手数で明らかにマグダレーナを上回る。 しかし、そのことごとくをかわされる。 カイはそれでも手を出し続ける。こいつを自分一人に引きつける。そうすればチャンスが回ってくる。 「はあっ!」 鎌を横に大きく振るう。 とっさに大きく間合いを取るマグダレーナ。 その瞬間、カイの背後を小さな影が追い抜いた。 涼姫が音もなく飛来し、マグダレーナに襲いかかる。 振り子のような独特の軌道と無音の飛翔は、涼姫の真骨頂である。 息もつかせぬ奇襲に、涼姫は成功を確信していた。 しかし。 「えっ?」 カイの背後から飛び出したとき、マグダレーナは地上にいなかった。 目標を見失い戸惑う涼姫の上空に影が差した。 上を仰ぎ見るより早く、涼姫は支えを失い、空中に投げ出された。 「きゃああぁぁっ!?」 無様に地面に転がり落ちる。 廃墟のビルを掴む左手から伸びたワイヤーが切断されていた。 背面跳びのように涼姫とカイを飛び越えたマグダレーナが、すれ違いざまにワイヤーを切ったのだ。 大きく跳ねたマグダレーナは、涼姫の視線の向こうで、着地しようとしている。 しかし、これはカイにとって好機。 短く跳ねて、反動を膝にためる。振り向きながら、膝をのばし、パワーを開放して突進した。 これぞミスティ直伝の必殺技、リバーサル・スクラッチ。 「うおおおおおぉぉ!!」 雄叫びをあげながら突進する。 相手は今着地。そして、あろうことか、こちらに向けて前に出た。 正気か。 リーチも速度もパワーも、こちらが上だ! カイはためらわずに攻撃を繰り出した。 右副腕の爪で裂く。マグダレーナは姿勢を低くして避ける。 左副腕のバックナックル。上体をスウェーさせて回避。 まだ終わらない。 カイは、右下に構えていた鎌を、超速度で斜めに振り上げる。 カイ・オリジナルのリバーサル・スクラッチ三連撃! しかし。 「なっ……!?」 カイは鎌を振り上げることが出来なかった。 さらに一歩踏み込んだマグダレーナが、手にした十字架型の銃器「クロスシンフォニー」で鎌の柄を止めていた。 両者は止まらない。 すれ違うその瞬間、マグダレーナはカイの胸に、ビームトライデントをたたき込んだ。 カイは驚愕の表情のまま、その攻撃を受ける。 そして、瞳から光が失われた。 「カイッ!!」 叫びともに、涼姫は残った右手を撃ち出した。 目標はマグダレーナ。こちらに背を向けている。それは涼姫最大のチャンスだった。 マグダレーナは動いた。 かわさずに、振り向かずに、持っていたマシンガンの銃口のみを背後に向け、涼姫の右手を狙い撃った。 乾いた音を立て、右手がはじかれる。 目標を掴めなかった武装手が地に落ちる。 「そんな……」 呆然とした涼姫の虚を突いて、マグダレーナが振り向く。 地面スレスレを飛翔し、滑るように涼姫に向かってくる。 カイに刺さったトライデントを抜き去り、正面に構えて突進してくる。 涼姫はブレイクダンスのような動きで、頭を下に回転しながら、その攻撃をかわそうとした。 旋回する両脚に隙は見えない。 だが、刹那の間隙を縫って、マグダレーナは三つ叉槍を突く。 涼姫の旋回が止まった。彼女の身体は、三つ叉槍によって、地面に縫い止められていた。 そして、涼姫の瞳から光が奪われる。 ジャッジが無慈悲にも、黒い神姫の勝利を確定した。 マグダレーナの完勝。二人の神姫を相手にかすり傷一つ負わないままでの勝利だった。 「こんなやつに……どうやって……勝つってんだ……」 大城は呆然とそう呟くしかなかった。 ◆ 「しょせん、リーダーが内容重視などとのたまうチームよ。この程度のレベルも当然か……」 マグダレーナの物言いに、誰も口を挟むことは出来なかった。 ミスティ、虎実、カイと涼姫のコンビに完勝できる神姫など、『ノーザンクロス』にはいない。 「……で、そっちの要求は、なんだ」 大城は固い声で言う。 彼女の要求を飲む以外に、三人の神姫のAIが戻ってくることはない。 大城はそう言う他なかった。 有希と涼子も表情を堅くして、桐島あおいとマグダレーナを見ていた。 あおいは満足したように頷くと、変わらぬ微笑を浮かべたまま、大城に答えた。 「菜々子をわたしのところまで連れてきて。わたしともう一度バトルするようにって……そう伝えて」 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/567.html
暗き過去に、深き眠りを(後編) どうやら“かまきりん”の制御は、本体たる神姫素体から蟷螂頭の方に 移ったらしい。恐らく昆虫の頭に専用のAIが仕込んであるのだろう。 AIの導入自体は誰もがやっている事なので構わないが、この使い方は 少々解せなかった。神姫の意思を無視する事は、私もアルマも赦せん! そしてアルマは“アサルトキャリバー”を起動させ、距離を詰める!! 「……ここからは、本気で行きますッ!!」 「Shaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」 「行け“かまきりん”!何かされる前に切り裂いちゃえ!!」 そっと、アルマが自らの腰に手を当てた。ベルトのバックル部分だ。 縁に偽装されたレバーを半分起こすと同時に、“Heiliges Kleid”の アーマーが浮き上がり、垂れ下がっていたマント部分が水平に立つ。 その縁は実剣の様に研ぎ澄ましてある……全てはこの時の為なのだ! 『Plug-out!』 「G、Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!??」 「アルマ!……よし、装備の折り込みと展開は成功した様だな」 再び電子音が叫ぶ。同時にアーマー全体が爆ぜ、四方に飛び散った! 鋭利な装甲板が幾つも胴部に刺さり、蟷螂の悲鳴が空間を支配する。 そして肝心要の爆心地には、既に先程までのアルマの姿はなかった。 ダメージをどうにか堪えた魔物が必死になって、“敵”の姿を探す。 「ぶ、ぶひ!?どういう事……?“かまきりん”ッ!!」 「Urrrrrrrrrrrrrr……!?」 「ここです、あたしはここにいます!」 「ぶふぅ!?あ、あれは……“あくまたん”!!」 皆の視線が上に集まる。キャノンの誘爆やアルマの“装甲排除”によって 鍾乳洞の天井は一部崩れ、外の光がエンジェルラダーの様に差していた。 その輝きを背に天へ舞うのは、黒き一人の武装神姫だった──アルマだ。 「……いいえ、そうじゃないですよ猪刈さん……ッ!!」 「Grrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr……!?」 「あたしは、紅星の閃姫(ロードナイト・ヴァルキュリア)です!」 紅き星の閃きを持つ戦乙女……私が三人の為に考えた二つ名の一つだ。 ロッテに以前約束した事柄であるからな、二人にも是非与えたかった。 センスが壊滅的な猪刈めには、一生こういう思考は宿らぬだろうがな? 「ろ、ろっ?な、なんだよそれ格好悪い……“かまきりん”!!」 「Syarrrrrrrrrrrrrrrrrrrrraa!!!!」 「紅き“戦乙女”の名にかけて……この戦い、頂きますッ!」 悪魔の意匠を一部残す物の、頭上に輝く“天使の環”と弾倉機構を持った 大いなる槍に盾……ロッテに引けを取らぬ“戦乙女”の姿がそこにある! 翼の狭間にある二基のブースターは、さながらアルマの頭髪にも見えた。 ロッテの勇姿と他に大きく違うのは……大型化した腰部のスカートだな。 「なんだよ、ナマイキ言っちゃって!撃て撃てッ!!」 「Shagyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」 「マイクロミサイル!?……ですが、この程度ッ!」 変わり身にすっかり興奮した蟷螂めは、命令通りに全身の装甲から ミサイルを放つ。だが、撃っているのは“かまきりん”ではない。 砲撃特化のフォートブラッグなら兎も角、この程度の戦術AIなら ミサイルの弾道制御も上質ではない。全身のブースターを噴かし、 無数の弾幕を振り解きつつ上空から一気に接近……背後を取った! 「一気に攻めろ、アルマ!勝負を決めてしまえ!」 「はいっ!この槍で……魔物を、倒しますッ!」 ここが最大の勝機と見て、私は最後の指示をアルマへと与える。 猪刈の判断不足に付け込んで、一気に畳み込むチャンスなのだ! 「ブレードスカート起動……はぁあっ!」 「Shaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」 「鎌が!?な、なにしてんだよぉ、斬れ、踏めっ!!」 “妹”は私の言葉を受けて、スカートに仕込んであった“腕”を 展開。その先端に据えられた六本のブレードを高速回転させて、 振り返りざまに斬ろうとしてきた蟷螂の鎌を、跳ね飛ばした!! 皮肉にも、同じ第四弾のジルダリア・ジュビジー両方のタイプを 参考にした新武装、“ヴァルキュリア・ロクス”の一撃だった。 「貴方の腕は二本。私には……もっと沢山の腕があります!」 「Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!?」 「か、“かまきりん”ッ!?」 そう宣言したアルマは、左手のバックラーを水平に構え……発射! いや、より厳密には盾に仕込まれたクローアームを展開したのだ。 鈎爪は過たず蟷螂の頭を捉え、アームの先端に仕込まれた銃器…… “ジャマダハル”サブマシンガンが複眼式カメラアイを粉砕する! 「捉えました……これで、決めさせてもらいますっ!」 「AhhhhhhhhGyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa……!!」 「ぶひぃ~っ!!!ば、バカなバカなぁっ!?」 AIの戦意が薄れた瞬間を狙い、アルマは胴体を垂直方向に貫く形で 左手で支えた槍を突き刺し、右手に掛かった“トリガー”を弾いた! 同時に炸薬の衝撃で、鋭い穂先が蟷螂の機関部へと叩き込まれる!! 「──────フォイエルッ!!」 「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa……!???!」 「ぶひぃ~っ!!!ば、バカなバカなぁっ!?」 アルマが“別のトリガー”を弾いた瞬間、忌まわしい蟷螂の上半身は 木っ端微塵に爆ぜる。“かまきりん”の武装は全滅、勝負ありだな。 裂帛の轟音が止んだ後には、胴体を砕かれ藻掻き苦しむ魔物が居た。 「ど、どういう事だよッ!?なんで槍だけで爆発ぅッ!!?」 「零距離砲撃をしてはならないと、誰も決めておらんだろうが」 「今回は、シュラム用のグレネード弾を撃ち込んでみましたよッ」 右手の“フラーメイェーガー”は、一見してただのランスではない。 炸薬によるパイルバンカー機能は勿論の事、穂先を通して敵の体内に 弾丸を撃ち込む事が出来る、“零距離砲撃の為の銃”でもあるのだ。 リボルバー機構まであるのに全く気付かない、猪刈めの眼力が悪い。 「今出してあげますから……やああっ!!」 “ヨルムンガルド”を拾ったアルマが、残った蟷螂の躯を斬り捨てる。 その中には、悪夢から醒めつつある“かまきりん”が横たわっていた。 感極まったアルマは武器を全て降ろした後、彼女をそっと抱き寄せた。 「う、ぅ……あれ、小官は……まだ生きてる……?」 「ユニットが壊れて、正気を取り戻したのか。何よりだ」 「……よかったです。助かってよかった、助けられた……!」 「小官の負けみたいですね……話を、聞かせてください」 『テクニカルノックアウト!勝者、アルマ!!』 「これであたしの過去も精算できました、マイスター!」 こうして戦いは終わり、二人は無事にヴァーチャル空間を抜け出した。 以前の時と同じ鐵を踏まない為に、私はエントリーゲートからアルマを 素早く回収……すぐに猪刈の所へと向かった。案の定口論をしている。 別れ際にアルマが2~3助言をした為か、“かまきりん”の目は鋭い。 洗脳か自閉症か分からんが……ともあれ今は、それを振り払った様だ。 「なんであんな負け方するんだよぅ!お前までバカかッ!?」 「お言葉ながら……小官にもマスターを選ぶ権利がある筈!」 「そう言う事だ猪刈。衆人環視の中で約束を破るか、貴様?」 「う、うぐっ!う、煩い!そんな約束なんか……ゲゥッ?!」 あのバカが“かまきりん”を破壊するよりも早く、ロッテが動いた。 私の肩を蹴って跳躍し、猪刈の眉間を“フェンリル”で殴ったのだ。 鉛玉を撃ち込むよりは遙かに弱いが、奴を気絶させるには十分だな。 「蒼天の旋姫(セレスタイン・ヴァルキュリア)が、見届けてますの」 「……ロッテや、二つ名とはバトルエントリー時に名乗る物だぞ?」 「これだって立派なバトルですの。あの娘を救い出せましたしね♪」 「忝ない。後、相談なのだが……マスターを捜していただけないか」 「引き受けよう、最早猪刈などの元で苦しむ事がない様に手配する」 ──────悪夢は必ず醒めるよ、朝はきっと来るのだから。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2818.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-3 『さあ! 今年もやってきました神姫センター春の祭典、マヤノスプリングカップ! 先日行われた一般トーナメントに続き、子どもの日である本日は小中学生によるジュニアトーナメントが開催されます。若人たちが熱きバトルを繰り広げるこのトーナメント、今年は第一試合から注目の参加者が登場だぁっ!!』 マイクを持った司会者はそこで一拍置くと、筐体の一角にスポットライトが当たる。 『当神姫センター注目の上位ランカー! 女子中学生にして総合ランキング6位の実力者、伊吹舞とその武装神姫、マオチャオのワカナだぁぁぁっ!!』 筐体のシートに腰掛ける伊吹とエントリーボックスに立つワカナの姿が、ライトに照らされながら手を振る。周りの観衆から送られる盛大なエール。 その光景をシュンは隣のシートから、あっけに取られて眺めていた。 「伊吹とワカナ……すごい人気だなぁ」 「ランキング上位者で、優勝候補ですからね。当然ではないでしょうか?」 「……まあね。その代り僕たちは完全に空気だけど……」 続いて司会者がシュンとゼリスを紹介するものの――伊吹のクラスメイトである新人マスターとその神姫、程度の簡素なものだった。 ゼリスがジュニアトーナメント参加者にしては珍しい、オリジナル武装タイプであることがちょっと関心を集めたようだが……観衆の興味は完全に伊吹とワカナに集中している。 もっとも、それで言ったら可哀相なのは対戦相手の方か。 向こうも中学生同士のコンビらしいが、ガチガチに固まって完全に緊張している。……まあ、一回戦から優勝候補と当たってしまったんだから当然かもしれない。 だからといって、同情している暇はない。シュンだって公式大会は初参加だし、ゼリスはオーラシオン武装で初の実戦だ。遠慮なんてしている余裕はない。 ゼリスとワカナ、そして相手の神姫二体が筐体にエントリーしていく。 その間に、シュンは伊吹と簡単な作戦会議を済ませる。 「まずワカナが前衛に出るから、ぜっちゃんは後衛についてサポートよろしくね?」 「リョーカイ。それでいいよな、ゼリス?」 「はい、問題ありません」 シュンに頷き返しながらゼリスがバトルフィールドに出現する。オーラシオン武装の白い装甲が、ライトに照らし出され美しく映える。 4体の神姫がそれぞれフィールド上に配置される。 『REDY GO!』の合図で試合が始まった。 「いっくよ~っ!」 試合開始と共に、ワカナが相手に向かって突進していく。 ふいを突かれた相手の神姫――二体の天使コマンド型ウェルクストラが慌てて散開する。 「ワカナっ、左の相手に攻撃よっ!」 左に逃げた一体がバランスを崩した隙を見逃さず、伊吹の指示に従ってワカナが装甲一体式のナックル――裂拳甲(リークアンジア)ですかさずラッシュをかける。 防戦一方になる仲間を援護しようと、もう一体のウェルクストラがサブマシンガンを構える。が、それを別方向からの銃撃が阻む。 ハンドガンを構えたゼリスが、的確な射撃で相手の動きを封じていた。 「よしっ! ゼリス、そのまま牽制だ」 「どちらかと言えば、私も接近戦の方が好みなのですが……」 「おいおい……慣れない武装でいきなり無茶しようとするなよ」 渋々といった様子で、ゼリスは指示通り相手の一体と距離を置いての射撃戦を開始する。 ウェルクストラのアルヴォPDW11に比べ、ゼリスの使っている専用ハンドガン"エスぺランサ"は連射力で劣る。しかし、ゼリスはフィールドの遮蔽物を巧みに利用しながら互角の撃ち合いを演じていた。 新武装の調子も、今のところは特に問題無いようだ。 撃ち合いを続けながらゼリスはウェルクストラを徐々に誘導し、仲間と分断させる。 相手が気がついた時には、すでに離れたもう一体のウェルクストラはワカナの猛攻にさらされてKO寸前となっていた。 こうなってしまえばもう、勝負は決まったも同然だった。 試合開始から1分後―― 『これはつよぉぉぉいっ!! ワカナ&ゼリスチーム、怒涛の攻撃で相手チームを連続OK! 優勝候補が見事、初戦を圧勝で飾ったぁ!!』 シュンたちは危なげなくトーナメント一回戦を突破した。 * トーナメント大会は神姫センター5階のアミューズメントフロアが会場となっている。 このフロアの一角には神姫に関する講習会を開くためのセミナールームもあり、そこがトーナメント参加者の控え室となっている。 一回戦を終えた後、シュンたちはそこでゼリスたちのコンディションをチェックしていた。 「ふう~、パーツはどこも問題無さそうだな」 「シュン。問題が無いのなら、次はもっと積極的に攻めてはどうでしょうか?」 「……ダメだ。それでトラブルが発生したらヤバいだろう」 シュンにたしなめられ、ゼリスは「むぅ~~」と不満ながら一応納得する。 現状では、まだ不安が残るオーラシオンの肩アーマーパーツ。姿勢制御とメインスラスターを兼ねるこのパーツこそ、ヒット&アウェイを主体にした機動戦での要になる。 万全でない状態で全開戦闘を行って、もし不調を起こしでもしたら……たちどころに窮地を招く結果となるだろう。 「大丈夫よ、ぜっちゃん。このくらいの大会ならワカナだけでもラクショーよ。心配しなくてもオーケーオーケー♪」 伊吹は呑気にモニターで他の試合を観戦しながら、余裕の表情をしている。その隣のクレイドルでは、ワカナがさっそく昼寝タイムに入っていた。緊張感のないコンビだなあ…… 本物の猫みたいにゴロゴロ眠る姿からは、このワカナが一回戦で嵐のようなラッシュで一体目を倒し、二体目もあっという間にノックアウトしてしまったスーパーファイターとは思えない。 能ある鷹は――もとい、猫は爪を隠すってやつか? 最後のフィニッシュは研爪(ヤンチャオ)で決めてたし。 「ふむ……確かにワカナさんの強さなら、私たちはバックアップに徹するだけでも勝ち進めるでしょうね……」 同意しつつ、ゼリスの口調はいつもと違って歯切れが悪い。 「ゼリス。思う存分戦いたいだろうけど、もうしばらくは我慢してくれよ。せめてユウが来るまではな」 由宇がゼリスのメカニックについて、最終的な調整をしてもらえば後は思いっきり戦っても大丈夫だろう。 そのためにも、しばらくはこのまま堅実に戦ってデータを集めないと。それになんだか今のままでも、伊吹とワカナだけでトーナメントを勝ち進めそうだし…… (下手にリスクを負うこともないよな。このまま勝ち進めるならそれでも……) そこまで考えて、シュンは何か胸につっかえるものを感じる。 なんだろうこの感覚は。このまま何もしないで勝ち上がれるなら、問題はないはずなのに。 ……何もしなくても? 「シュン……シュン!」 ゼリスに袖を引っ張られ我に返る。 気がつくとゼリスがジッとシュンを見上げていた。澄んだエメラルドの瞳に見つめられ――シュンは気まずくなって目を反らす。 「シュッちゃんどうしたの? 急にボーっとしちゃって……」 「なんでもないよ。えっと……喉が渇いたから、ちょっとジュース買ってくる」 不思議がる伊吹にとっさに言い訳をしつつ、シュンはその場から逃げるように席を立った。 控え室のドアをくぐると、トーナメント会場の歓声がここまで聞こえてくる。 あたかも試合の熱気までそのまま伝わってきそうだ。こうして外野から眺めてみると、さっきまで自分もいたはずのその場所が――まるで別世界のように感じらる。 群衆の中を歩き、シュンは一人考える。 このままシュンが何もしなくても勝ち進める。 試合は伊吹とワカナに任せればいい。特に指示を送らなくても、ゼリスはバックアップくらい無難にこなすだろう。あとは由宇の武装の調整がうまくいけば、何の問題もない。 ――それで? 問題なかったとして、その中でシュンは何をしたと言えるのだろう。そんなんでゼリスのマスターって言えるのか? 僕には一体、何ができるんだ――。 (僕はゼリスのマスターであっても、ひょっとしてあいつにとっては必要な存在じゃない……のか?) 伊吹とワカナはもちろん、由宇もゼリスもすごいヤツラだ。一緒にいるシュンだからこそよく分かる。 でも……彼女たちに比べれば、自分は何もできない凡人に過ぎないのではないだろうか。 考えれば考えるほど思考がマイナスになっていく……。 シュンはまとわりつく不安を振り払うように、強く頭を振る。 (とにかく今は次の試合だ。こんな気持ちのまま周りの足を引っ張っりでもしたら、余計にダメダメじゃないか) シュンは強引に思考を切り替える。みんなのところに戻ろう……そう思い、踵を返したところで気がつく。 あ……そうだ。一応ジュースを買って帰らないとおかしく思われる。伊吹はあれでなかなか鋭いし、ゼリスもなんだかんだで敏感にシュンの気持ちを察してくる。心配をかける訳にはいかない。 自販機は確かフードコートにあったはず――くるりと振り返ったところに、いきなり何かが激突した。 「うぎゃ~~っす!!?」 シュンが驚きの声を上げるより先に、甲高い悲鳴が聞こえてきた。 顔を上げると、目の前に武装神姫を連れた少年が転がっていた。どうやら彼がシュンにぶつかってきた相手らしい。 転んだ拍子に打った膝の痛みに顔をしかめつつ、シュンは立ち上がりながら少年に手を差し伸べる。 「えっと……君、大丈夫?」 「おっと。こりゃ兄ちゃん、すんまへんなあ」 彼の手を取って関西弁の少年が立ち上がる。 シュンと同年代か少し下くらいだろうか? 快活そうな男の子だ。 「ごめんな、兄ちゃん。オレこっちの神姫センターは初めてでな~。ちょっと迷ってもうて、急いでたんや」 「なるほどね。でも人が多いところでは、あまり走ったりしない方がいいぞ?」 「うん、これから気をつけるわ!」 シュンが注意すると少年は素直に頷いた。……うんうん、元気があって大変よろしい。 妹がいるせいか、年下の相手にはついつい兄貴ぶってしまうのがシュンの癖だった。 「あかんわっ、大丈夫かフッキー!?」 フッキーと呼ばれた少年を心配するように、肩に乗る彼の神姫――寅型MMSティグリースが騒ぎ立てる。 どうやらさっきの悲鳴も、この神姫のものだったらしい。 「心配あらへん。こんなんちょっと転んだだけやし」 「せやかてフッキー! アンタ耳たぶがこんなに大きく腫れ上がってしもうて……」 「アホかっ、この福耳は生まれつきやっちゅーねん!」 突然始まったボケとツッコミの応酬に、あっけに取られるシュン。 ……なんだこのふたり。神姫とマスターでお笑いコンビでも目指してるのか? シュンの様子に気がついて、関西弁の少年――フッキーが照れ臭そうに笑う。 「あ~、すんまへん。こいつ気がつくと、すぐ今みたいにボケ始めてな~。ホンマ誰に似たんやろうね?」 「マスターのアンタに決まっとるやんっ!」 ビシッとツッコミを入れるティグリース。ダメだこのふたり。放っておくと、いつまでも延々漫才トークを続けそうだ。 「あの……コントの最中に悪いけど、君たち急いでたんじゃないのか?」 シュンが指摘すると、フッキーとティグリースはハッと気がついて慌て出す。 「そやった、オレら急いでるところやったんや!」 「あかんでフッキー……早くせんと遅刻してまうで?」 「おお、そんなんなったら怒られるで。じゃあな、兄ちゃん。またどっかで会おうな!」 早口で捲し立てると、少年と神姫はすぐさま人混みの中に消えていった。 シュンは笑いを堪えつつ、そんなふたりに手を振って見送る。 やれやれ……何というか慌ただしいコンビだった。お蔭でさっきまでいろいろ滅入っていた気分が吹き飛んでしまった。 なんだかスッキリした気分で、シュンは控え室に戻る。 彼がジュースを買い忘れたことに気がついたのは、そのことをゼリスに指摘されてからだった。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/176.html
そのきゅう「たまには勝敗の無いゲームを」 「ティキ、大丈夫かな?」 「心配性だね。大丈夫だよ。オレ達の神姫だっているんだからね」 「お前は初めてかもしれないけど、俺たちは何回かやってるから、安心しろよ」 「しっ。待って、うちの子が何かを見つけたみたい」 その言葉に反応し、僕らはモニターに釘付けになる。 そこにはティキと、他三体の神姫たちの姿があった。 その日僕は、弓道部の仲間で、武装神姫のオーナー仲間でもある式部敦詞に誘われ、チョット大き目のセンターに遊びに来ていた。 式部が言うには、 『武装神姫の、バトル以外の楽しみ方を教えてやるよ』 との事。 一体何の事かまったく理解せず、僕はティキと一緒に半ば強引に式部について行った。 まずそこで僕は二人の男女を紹介される事になる。 チョット背の高い優しそうな顔立ちのお兄さんと、アーンヴァルの素体にストーラーフのコアをつけた神姫。そして眼鏡のクールな女の子とチョット珍しいフブキの神姫。 「はじめまして。オレは司馬仙太郎。君よりはチョット年上の大学生だよ。で、コッチがオレの相棒、ナイア。よろしくね」 「私は結城セツナ。高校二年生。こちらが私の海神(わだつみ)。よろしく」 で、僕はその女の子――お姉さんの名前を聞いて驚くわけだ。チロッと式部の方を見ると、ヤツはニヤニヤと笑っている。 コンチクショウ! わざとだな! 僕は腹をくくって自己紹介をする。 結城さんが僕の名前を聞いて、驚いてから、やわらかく笑った。 『カードキーの様であります』 海神がそのカードを拾いながら言っている。基本装備をほとんど持たない忍者型の海神は、忍者刀・風花に大手裏剣・白詰草、黒き翼プラス一部ヴァッフェバニーの装備で武装している。 『なるほど。それでさっきの扉を開けろというワケね』 そう言ったのは式部の神姫、ツガルのきらり。こいつは先行特別販売でGETしたツガルを事あるごとに自慢していた。きらりは基本的なツガルの武装。 『パターンだネ。もう少し凝ってくれてもイイのにネ』 ナイアはそういうとやれやれとでも言いた気にため息を吐く仕草をしている。ナイアは悪魔型フル装備に天使型のウイングユニットを無理やりつけたような、一際巨大なシルエットをしていた。 『あのあの、そういうものなのですかぁ?』 この中でティキだけがオドオドしているのがなんだか情けない。ちなみにティキはバトル用の武装。だって何やるか聞いてなかったんだから仕方ない。 『そ。こういう探索ものではありきたりの、要するにスペースを無駄にしないためだけの処置ね』 ティキとはすでに見知った仲の、きらりが答える。 『それじゃ扉まで戻る前に、一応奥まで行ってみよっか? 何も無いとは思うけど、初参加がいるからその方がいいでショ?』 その言葉にティキ以外の二体が頷いた。 今ティキ達がいるのはPC上に再現された機械遺跡。ジオラマ作成ツールを利用して作られたモジュールの一つ。そのジオラマに設定されたイベントをこなしてクリアを目指す。 本来はネットを介してやるらしいんだけど、こんな風にオーナー同士集まってやるのもまた一般的。 実際ならそれぞれのユーザーが自作するものらしいんだけど、今回使用しているのはオフィシャルなもの。それでも元は一ユーザーが作ったもので、それを調整したものらしい。 ……ジイ様に聞いたTRPGとか、母さんに聞いたMMOとか、そんなのを彷彿させる。 で、僕達オーナーはなにをするのかと言えば、神姫たちに時限式で送られる後情報を基にした指示を与えたり、一緒になって謎解きなどする事などなど。ま、中にはオーナーが一切何も出来ずに、ただ見守るだけのモジュールもあるみたいだけど。 艱難辛苦を乗り越え、ようやく最深部への扉の前に到着。 そしてここにきてオーナーに向けたテキストが現れた。 『この扉より先、オーナーの指示は神姫に届きません』 なんだよ。最後の最後で観戦モードか。 当然僕らはそれを神姫たちに伝えた。 『ふええぇぇぇぇ? 心細いのですよぉ~』 さすがにティキは不安を隠せないでいる。 しかし他の三体は慣れたもの。動じることなく扉を開ける意思を示す。 そうなるとティキにも僕にも拒否権なんてあるわけもなく、しぶしぶと同意する。 躊躇無く扉を開けるナイア。 広い空間。その空間で複数の神姫が一点を目標に攻撃してる。 『あなたたち、ここは危険よ! すぐに退避しなさい』 目標に向かってマシンガンを打ちながら、こちらを振り返る事無くそのアーンヴァルは言う。 『えっと、そう言われても……困るのですよぉ~』 『ティキちゃん、自動起動するイベントだから。なーに言っても無駄だから。ネ?』 困惑するティキに、ナイアはにこやかに答える。答えながら、臨戦態勢を整えた。 『ふぇ? え?』 何をして良いのか見当もついていないティキ。その脇では海神ときらりも攻撃の態勢を取っていた。 それに習い、ティキもレーザーライフルを構える。 四体が準備をするしないに関わらず、多くのNPC神姫がほぼ同じポイントに攻撃を続ける。 『いける?』 NPCの一体がそうつぶやいた時だった。 しゅるるるるるる あからさまな音を立てながら無数のコードが大勢いるNPC神姫たちに襲い掛かる。 『きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!』 そのコードはまるで自我を持つかのように自在に動き、多数の神姫を一人残らず絡め取る。滑る様に神姫の肌を蹂躙し、手足の自由を奪う。 そして動けない神姫を侵す様にソケットの穴や口に侵入した。……それ以外のところにも。 『いやぁぁぁぁぁぁーーーーー!!』 『あああぁぁぁぁぁぁ!!』 コードに犯された神姫たちが悲鳴を上げた。 それをモニター上で見ていた僕は赤面した。 「……なんかこれってエッチくない?」 小声で隣に座っている式部に話す。 「同感。……女のクセになんで結城はこんなの選んだんだ」 僕と同じく小声で言った式部の言葉を受け、僕はチラリと結城さんを見る。 だが僕には眼鏡をかけたそのお姉さんの表情を図る事が出来ない。 『~~~~~~~!!!』 ティキが真っ赤に顔を染めながら左手のハンドガンで射撃を開始する。狙いはコードの一本一本。 「弾が六発しかないリボルバーで何やってんだよ~」 僕の声がティキに届かない事は自覚していたが、それでも言ってしまった。 『まだターゲットそのものが現れていません。無駄弾を消費するのは賢明では無いと忠告します』 海神が僕の代わりにティキに注意してくれた。 『どうやら大ボスのお出ましのようよ。ティキちゃん』 きらりが両腕のライフルを構える。 そこに現れたのは現行通常販売している神姫五種の首を持つ鋼鉄の大蛇。尻尾の変わりに無数のコードが生えている。その尻尾コードが、他の神姫たちを犯していた。 『……悪趣味~』 ナイアは心底嫌そうな表情で、吐き捨てるようにそう言うと、レ-ザーライフルを発射させる。 それを神姫が繋がれたままのコードで大蛇は防御。その結果、レーザーはNPC神姫を焼き、溶かす。 『ますます持って悪趣味!!』 きらりはそう言うなり、狂った様に二つのライフルを乱射させる。 だが大蛇も防戦ばかりではない。大蛇のコードがきらりの足に巻きつく。 『ひぃっ!』 巻きついたコードに嫌悪感を顕にする。 きらりに向かって更にコードが迫る。 『いやっ!!』 きらりは目を閉じた。 が、いつまでたってもきらりにコードが巻きついては来ない。 恐る恐る目を開けるきらり。そこには海神が立っていた。海神の刀が、きらりに向かってきたコードを断ち切っていた。 「なるほど。神姫の怒りと恐怖をあおる為の演出なんだ」 モニターを注視していた司馬さんが感心した様に呟く。 「いや、だとしても悪趣味なのは変わらないと思うんですが……」 「そうね。でも計算されているわ。オーナーとの連絡は届かず、敵は悪趣味。あの子達、冷静に判断できているかしら?」 僕の言葉に対し、結城さんは冷静に答える。心配じゃないのかな? と思わずにいられないくらいに、冷静。 そういう意味じゃ、とても普段の態度からは想像も出来ないくらいに我を失っている男が隣にいる。 「きらり! きらり!! 大丈夫かーーーーっ!!」 ……お前、最初に僕になんて言ったよ。 そんな間にも状況は変化しているようだ。 大蛇に犯されていた神姫たちが、攻撃に参加し始めた。 もちろん、エネミーとして。 『このままじゃ手詰まりだヨッ! 海神ちゃん、ティキちゃん。私たち援護するから、二人でアイツに接敵して!』 『任務、了解』 『ハイですぅ! レーザーライフル置いて行くですので、使って欲しいのですよぉ♪』 『ありがと。きらりちゃん、行くヨ!』 『あんな目に遭って、更にあんなのに利用されたくないもの。全力で行くわ!』 どうやら作戦が決まったらしい。それぞれ武器を改めて構える。 ティキも西洋剣をスラリと抜いた。 何の合図も無く、四体は同じタイミングで動き出す。 二本の巨大な銃口から光の筋を打ち出すナイア。 そのフォローをするように、ナイアの撃ち洩らしはきらりが両の手のライフルで粉砕させる。 縦横無尽に宙を飛び、地を駆け、時には障害になる敵を刀や大手裏剣でなぎ払い、海神は大蛇へと近づく。 ティキは、味方の援護、敵の銃弾、大蛇の尻尾のその事ごとくを超反応で避け、一足飛びで大蛇に接した。 『一つっ……ですぅ☆』 ティキは大蛇の傍らに到着するなりそう言った。そう言った後、大蛇の首の一つ、マオチャオの首が爆散する。 『ティキとおんなじ顔を、つけてて欲しくないですよぉ♪』 そう言うなりすぐにその場から移動。一拍遅れてその場にコードが叩き付けられる。 『……………………』 何も言わず、海神が大手裏剣を投げる。それはそのまま吸い込まれるようにアーンヴァルの顔がついた大蛇の首を断つと、そのまま勢いを保ち、大蛇の背後の壁に突き刺さった。 ここにきてようやく大蛇に侵された神姫たちの攻撃がティキと海神に向けられる。しかしそれらの攻撃が開始される前に、ナイアときらりが大蛇の手足となった神姫を破壊する。 すでに勝敗は決していた。 「マスタ、恐かったですよぉ~」 現実の体に意識が戻るなり、ティキは僕の頭に飛びついてきた。正確に言えば顔に向かってきたティキを心持避けたら、頭に飛び込んで来たんだけど。 僕は頭の上でじたばたしているティキに意識を向けながら、それでも三人に目を向けずにはいられなかった。僕は、自分以外の神姫オーナーを知らなすぎる。 司馬さんはナイアを肩の上に乗っけて、ナイアの健闘を称えていた。ナイアはそれに胸を張って答える。 式部は…… あー、なんて言うか、あの普段の態度は何処行ったんだか。頬ずりでもせんばかりにきらりを抱きしめて離さない。 ……正直、付き合い方を改めようかと、本気で思う。 で、結城さんは。 眼鏡の奥の瞳に優しげな光を湛え、そっと海神の頭をなでる。フブキは表情を豊かに表すことが出来ないらしいけど、海神のその顔はなんだかうれしそうで照れくさそうに見えた。 僕は頭の上でなおじたばたとしているティキを自分の掌に乗せて、 「お疲れ様」 と言う。 それにティキは満面の笑顔で答えてくれた。 終える / もどる / つづく!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/336.html
単発作品用トップページ このページは? このページは、『一発ネタを思いついたんだけど、どうにも本スレには投下しづらい。かといって連作にするかどうかもわかんないからwikiにも投下しづらいぜ!』という作者さん向けの単発作品用トップページです。ログイン不要で編集も出来ますので、お気軽にどうぞ。 そして続きを思いついたりそれを妄想のままに書き上げてしまったりすれば、その作品のトップページにリンクを張り直してください。 連載を持っておられる作者さんも、思いつきなどあれば遠慮無く! 以下のテンプレをコピー&ペーストして、作品へのリンクを張るだけの簡単仕様です(wikiの基本的な使い方はトップページを参照してください)。 テンプレ開始 タイトル ここに作品のページへのリンクをどうぞ 簡単な紹介などあればこちらに。登場人物紹介などは、単発の場合、本編の冒頭や巻末に書いた方が良いかも。 テンプレおわり ↓作品へのリンクはこれ以下に貼っていってください。 天使のたまご ひょんなことから神姫のマスターになった青年と、ちょっと(だいぶ?)おまぬけな神姫の物語 音声ファイル2036 単発妄想ネタです。なんだかMightyMagicの十話とネタ が被ってしまった。 三十路の独身男性、自営業の場合 実際に神姫がいたら、こーゆーコトをしてもらいたいな、と。 バトルだけではなく、多方面で活躍するんじゃなかろうか、と。 第五弾発表 ある天使型の場合 第五弾の鳥型。装備が完全に被ってます。これを見た天使型の反応は如何に。 本当に一発ネタです。 弾丸神姫 神姫バトル初期の頃には、少ない装備のなかでこんなコンセプトの神姫もいたんじゃないかなー、という話です。 騎士子のヴァレンタイン大作戦 時事ネタです しかしなぜか妄想全開のバトルモノに… うっかりページタイトルを「騎士子」にしてしまいました… ねここの飼い方からゲストを出演させていただいてます 目覚めればそこは 素体購入記念。組み替え最中にふと思い付いた一コマ。 花は咲き乱れて※注意!18禁です 花子えっち 買うときは中身を確認しましょう 花種きてから数日後・・・ R18指定 どうしようもない神姫オーナーのお話。 こんな事がポンポン浮かぶ俺って・・・救いようがないな(w 埋め騒動 ややR18指定 スレの埋めに端を発した小騒動。 きっかけは 615の一行だった。 615氏に最大級の感謝。 シラヌイと僕のこと かなり長いです。 神姫狩人からねこねこ団にご登場願いました。 ツーリング@2036 バイクと神姫ネタ。 30年後の道路を走っているモノって、どう進化しているんだろうか、と。 リセット(ギャグです) 役立たずのハウリンにリセットの危機が・・・。 一見残虐物、実はギャグ。 ゆめであえたら どこにでもありうる、とある武装神姫とオーナーのお話。 *注:暗いです。 ネコのマスターの誕生日 誕生日ネタ。 自分の誕生日って人に忘れられると悲しいですよね。とか言って人の誕生日はすぐ忘れますが。 203X年 とある新聞の神姫特集(カコミ) 御免なさい。例によって酒の勢いで書いちゃいました。第七弾ネタです。白黒兎以来の神姫購入になりそう。 チェイング! 鳥子三体が繰り広げる小ネタ。 黒子ときっしー(超適当) SS総合掲示板へ投稿したものの再録。単発ページ投稿にあたり、新規の方向けに固有名詞など調整。一年前のもの。 種子さんときっしー(超仮タイトル) 「黒子さんときっしー(超適当)」を書いた時に考えていたネタ。長いです。本来なら上中下か上下にわけるくらい。でも単発なので一本。 デレなきっしー(蝶適当) 「種子さんときっしー(超仮タイトル)」のスピンアウト、余り、っつーかおまけ。上記タイトルの本文だったのだけど、焦点がボケるので本文から削除したもの。でも面白い描写ができたかな?と思ったので、独立して投稿。 あるオーナーと神姫 どこかの誰かの話。絆っていつ繋がるかわからないもの。(残酷描写があります。ご注意を) 桜舞 もしかしたら、こんなことしてる人たちがいるかも、しれません。 あるオーナーと神姫 牙 どこかの犬とオーナーの話。自分を楽しむと敵が多いかも? アホ毛ネタ 「ねここの飼い方・光と影」に寄稿された漫画を読んで浮かんだ小ネタ。 ゼルノとぼくの初対面 ゼルノグラードを入手した「ぼく」と彼女とのショートショート。 本スレからの再録です。 ある「とても平和な」日の話。 彼女は真面目、オーナーは・・・ 雪国の風景 季節は冬、北海道にある実家へと里帰りしたオーナーと犬子のSS S-R-princess むるちーメインで書きたかった。それだけです。 皆様の作品に肩を並べられるかわからないので、こちらにいます。 神姫に願いを 神姫に願いをかけたなら…… トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/442.html
「何なのネ、コイツッ!?」 虚空の空を一瞬で塗り替える、華麗で危険な花火の大群。 「……ふ」 しかし彼女はまるで、危険な花火師の影から産み落とされたかのように、平然と現れ出る。 「貴様も……贄となれぇ……!」 「チョ!?」 次の瞬間、フィールドには断末魔の絶叫ではなく、残酷な破裂音が響き渡っていた。 頭部をパイルバンカーで打ち抜かれ、無残な姿を晒す相手の神姫。 彼女の脳髄が砕け、貫かれ、オイルと言う名の血肉が、漆黒の神姫の全身に新たな彩を加えていく。 「ファン・エタンセル!!!」 まるで追悼の言葉を送るように……しかしその口元には禍々しい三日月の笑みを浮かべ……最後のシーンへと彼女は躍り出る。 復讐と言う、華麗で狂気に満ち溢れた舞台へと ねここの飼い方・光と影 ~四章~ 試合終了と同時にアクセスポッドから電光のごとく飛び出して……いや逃げ出してくる神姫。 「……アルネ?ちゃ、ちゃんと顔あるネー?」 「あるから、んな馬鹿みたいに顔ペチペチ叩くのやめんか。この馬鹿猫が」 しきりに顔があることを確認しそれに安堵するマオチャオタイプと、それを呆れた様に見下ろす、胸元全開の黒いコートを中心としたパンクファッションに身を包んだケバケバしい金髪の女性。 「しかしアイツの戦い方、なんてーか自殺願望でもあるんじゃないか? お前の攻撃避ける所か無視して突っ込んできて、一撃か」 そう分析しつつもケラケラと下品に愉快そうに笑う彼女。自分の神姫が負けたことが、逆に嬉しそうなほどである。 やがて笑い声がふっと途絶え、彼女は他人が目撃すれば恐怖し畏怖されんばかりの、鋭く激しい猛禽類のような眼つきでモニターを眺める。 「ヤツの目はある意味…貴様らに似ているかも知れんな。満たされていない、良く腐った目だ」 そこには獲物をまた1匹仕留め、達成感と虚脱感、悦楽と落胆、あらゆる感情が渦巻き、顔に滴るオイルをチロリと嬉しそうに舐めたネメシスの姿が映し出されていた。 (また1人……でも何か違う、まだまだ足りない。アイツじゃないから……?) フィールドに佇みながら、自問自答を繰り返すネメシス。 (でも……アイツに自ら挑むことは許されない、許されるはずが無い。私に出来るのは……) ネメシスは自らサイドボードを呼び出し、手のひらサイズの薄い紙のような物体をその手に実体化させる。 それはマオチャオのヘッドギアやドリルなどにマーキングされている猫の顔のシール。 …・・・但し顔には、斜めに鋭く稲妻のようなラインが走っており、まるで猫の顔を雷光が無残に射抜いたかのような風合いのシロモノだった。 ネメシスはそれをエトワール・ファントムの機体にペタリと貼り込む。外見からは見えない、ネメシスだけが確認できる位置へ。 その場所には、今貼られたものも含め十数枚の顔が貼られている。 それは誇りか、贖罪か、あるいは自らが手を掛けた者への追悼? それとも…… (私は……あの日から……) その日、一家は久しぶりに両親と娘が揃っての夕食を迎えていた。 だがそこにあるのは賑やかな談笑に彩られた幸せな親子の風景ではなく、カチャカチャと無機質に食器が擦れ合う音のみが、3人にとっては広過ぎる食堂に虚しく響き渡る。 穏かだが冷たい空気。 「明」 ふいに父親が口を開く。豊かな口髭を生やし、冷徹で相手を威圧するような鋭い眼を持つ、仕事の鬼と形容しえるような雰囲気を持った人物である。 「……はい、お父様……」 娘は控えめにおずおずと、返事を返す。忙しい父との会話は1ヶ月ぶりであるにも拘らず、いやだからこそ口は重くなる。 「ふぅ……もっとはっきり返事するように、まるで名前と正反対ではないか。俺はお前をそんな風に育てた覚えはだな……」 語尾が徐々に強くなってゆく父。それとは反対に臆して更に縮こまる娘。 「あなた、そのくらいに……」 「ん、そうだな……。明、お前は今日が誕生日だったな。」 「そう、ですね」 明はそれが自分のことであるのに、興味が全くないかのように応じる。 「……まぁ、いい。とにかく、誕生日プレゼントを用意した。お前が以前から欲しがっていると言っていた……そう、武装神姫とかいう人形だな」 「え……!」 明の顔が上がり、薄い頬とその瞳には感激と喜びが溢れ出すかのようだ。 彼女は以前から武装神姫が欲しかった。 だがバイトが許されていない彼女にとって、その値段はとても手が出るようなレベルの物ではない。オプションだけならまだしも、本体を買う金額には彼女の小遣いでは1年分であっても全く足りない。 以前の会話でその事を父に話したこともある。だがその時はそのような高額な玩具は買うに値しないと一蹴されていた。 だが父は娘が欲しがっていた事を覚えていてくれた。 その事も彼女にとっては喜びだった。 「それじゃあ、マオチャオを買ってきて下ったのですね、お父様」 「マオチャオ……? 私は玩具には疎くてな。 詳しくはわからないが、私の知人でその業界に顔の利くヤツがいてな。頼んで取り寄せてもらった。 せっかくなのでな、お前が喜ぶようにと限定版とやらの先行品を頼んでやった。」 「限定版……」 明の顔がさっと曇る。そう、現在の所マオチャオで限定版が出たという話は…… だが父は、そんな娘の表情の変化に気づく風もなく続ける。 「実はお前に驚いてもらおうと思ってな、もう起動させてある。上がりなさい」 父の椅子の傍に置かれていた小物入れから、小さな影がテーブルの上へと躍り出る。 娘は事前知識で知っていた。神姫はCSCを選択、それをセットすることで起動する事を。 そして父の手で起動されてしまったという時点で、既に自らの望む選択肢は選べなくなっているのだと言うことを。 「初めまして、アキラ。貴方が私のマスターですね」 明の眼前までやってきた神姫は、まるで王に挨拶する姫君のように、華麗な動作で自らの主人への儀礼を行う。 「………」 だが明は答えない。 それもそのはず。その神姫は彼女の予想、あるいは願望とは掛け離れていた。 その神姫は彼女が思い描いていた、つぶらで大きな瞳とショートカットの髪を持たず、凛々しい瞳と美しく長いブロンドの髪を持ち、ボディの色もマオチャオ特有の暖かみのある暖色系ではなく、冷たく黒光りする漆黒、そしてまるで血で染め上げられたような鮮やかな紅。 「どうだ明。いやはや手に取るまでは馬鹿にしてたが、どうして最近の人形は凄いものだな。」 愉快そうに笑う父。だが明にとっては…… 「どうした明。せっかく発売前の、しかも限定品を買ってきてやったのだぞ。少しは喜ばんか」 父の語気が再び強くなる。明はそれに押されるように…… 「…………ありがとう、ございます」 俯きながら、心を閉ざし、父の無理解な好意にも仮初の礼を述べることしか出来なかった。 「アキラ、これから宜しくお願いしますね。私はこれから貴方と仲良くなりたい。貴方と楽しい時間を過ごしていけたら……」 「黙って」 サイドボード上で嬉しそうに笑っていた神姫を、先ほどまでの様子からは考えられないような冷たい口調で注意する。 そのまま部屋のベッドに乱暴に突っ伏す明。 「1つだけ言っておくわ。……私が望んだのは貴方なんかじゃ、ない」 突き放すような口調……だがその語尾はかすかに震えていて 「……そう、ですか」 神姫の顔からもふっと笑みが消える。彼女もあの場にいたのだ、そして彼女は神姫。 神姫関連の情報は基本情報としてインプットされている。 それは、今ベッドに伏せっている少女が先ほど発した言葉の意味が理解できることを示す。マオチャオの意味を…… 「そう、よ。お父様の手前、貴方は私の元にいる。ただそれだけよ」 気まずい沈黙が訪れる。2人とも項垂れたまま顔を上げようとも、声を掛けようとも、しない。 やがて、神姫は顔を上げ、決断する。 「では、たった1つだけお願いがあります。私の最初で最後の願いです」 「……何よ」 迫力に気圧された明が思わずその神姫を見つめ、2人の視線が交錯する。 「私に、名前を……たったそれだけです」 「……いいわ」 彼女は戸棚にある本の群れに目線を移動させ、そして1冊の本を注視する。 「……ネメシス。それが貴方の名前」 「了解しました。我が主、アキラ」 復讐を司る神の名前、まさに私と彼女に相応しい名。 このとき彼女はそう信じていた。 (今思えば……必然だったのかもしれない。私が黒衣を纏って生まれたことも、こうなる事も) 自嘲気味な思考を重ねるネメシス。 マオチャオ型を屠った事で、一時的にだが多少は精神が安定しているのかもしれない。 新興都市のビルディングが醸し出す、幻想的で美しいが何処か無機的な冷たさの夜景が彼女の眼前に広がっている。 「2人で……見たかったな」 ポツリと、自分自身が発した言葉に驚くネメシス。 「……あれ、なんでだろ。景色が霞んで……」 その眼には、先程までの狩猟の獣のような鋭さは失われ、ただポロポロと虹色に輝く雫が彼女の頬へと流れ落ちてゆく。 復讐の炎が衰えた時、繊細な魂が露になる瞬間。 『お前は今日から明と共に過ごすんだ。命令だ』 『…………ありがとう、ございます』 自分と同じ境遇を与えられ……いや押し付けられた少女。 だからこそ愛しい。神姫である自分のこの感情が正しい物なのかはわかない。 しかし、今自分が行っていることは彼女に対する裏切り、少なくとも許容してはくれないだろう。 (いっそ、壊れてしまえばいいのにな……完全に) そうすれば自分はジレンマから逃れられ、彼女は新たな神姫を得られるかもしれない。 (……それも嫌……) 彼女と会えなくなる。そう少し考えるだけでも、AIがオーバーフローを起こしそうになる。 いかに彼女に遠ざけられ、蔑まれてもこの感情だけは変えられない。それは自分の中のもっとも大切なココロの在り処だから。 「 ネメシス ちゃん 」 「!?」 後ろから柔らかな声が、自分に向かい掛けられる。自分以外の存在のないはずのこの場所で。 振り向いた彼女は、大きくその眼を見開く。 そこにいたのは、ネメシスにとっての光。影である自分では決して届き得ない存在。だが、だからこそ望むのであろう。 「……ねここ……」 ねここを見つめるネメシスの眼には、涙を浮かべたまま、復讐の炎が再度宿っていた。 それは、熱く激しく……とても哀しい瞳。 続く トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1229.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 登場人物+登場神姫の紹介 ◆典雅関係者 島田 祐一(しまだゆういち) 高校生。 神姫暦5年のベテランオーナー。 学校では目立つところの無い平凡な生徒だが、実はガンマニアの刃物マニアで戦闘機マニア。 さらに極めて重度のゲーム中毒(ジャンキー)。 …実は結構ダメ人間かもしれない。 アイゼンのオーナー。 過去に海難事故に遭い、感情を喪失するCSCと言う症状が発症した事がある。 症状自体は完全に回復したものの、いまだに水はトラウマで、基本的に泳げない。 アイゼン タイプ・ストラーフ。 この物語の舞台となる神姫センターにおいて最強クラスの戦積をもつ神姫。 特定の装備や戦術にこだわりは無く、状況に応じた武装と戦術を使いこなす柔軟さを持つ。 それは、実は能力的には大した事の無い彼女が“強くなる”為に選んだ道である。 口数は余り多くなく、無表情で淡々と物事をこなすタイプ。 一度負けた相手には(装備が同じ限り)二度と負けないという変な実績がある。 今のところ例外はマヤアだけ・・・。 伊籐 美空(いとうみそら) 高校生。 勝気で気まぐれ、我侭にして傍若無人。 たぶんツンデレ。 おウチがアットホームなヤクザ屋さん。 一応、対外的には社長令嬢。 フェータのオーナー。 実はクォーターだったりする。 フェータ 刀使いのアーンヴァル。 他の武装を一切持たず、有り余った推力によるすれ違いざまの居あい抜きを武器とする。 本来非力なアーンヴァルが何でこんな戦法なのかは本編を参照のこと。 おしとやかで控えめな性格だが負けず嫌いな一面もある。 リーナ ベルウッド(lina BellWood) 11歳。 金髪ゴスロリのお姫様ルック。 資産家の一人娘。 美空の従姉妹でクォーター。 レライナのオーナー。 日本にはとある目的を持って来日している。 レライナ タイプ・サイフォス。 瞬間移動じみたダッシュを武器にする神速の騎士。 しかし、ダッシュの使用にはバッテリーを大量に消耗するため、戦闘持続時間が短いと言う欠点がある。 リーナの教師として振舞うために、傍若無人な性格を演じているとか? 島田 雅(しまだみやび) 正体不明な祐一の姉。 最近になって神姫を購入。 その魅力に骨抜きにされ、どっぷりハマった挙句、“典雅”という有限会社まで立ち上げてしまった趣味人。 この人が何をやっても驚いてはいけない(笑)。 セタのオーナー。 セタ 砲撃戦を得意とするハウリンタイプの神姫。 特製のセンサーとぷちマスィーンズによる着弾観測を行い、二門の吠莱壱式による曲射砲撃とスナイパーライフルによる狙撃を使い分ける。 実はボクっ娘。そして無駄に元気。 名前の由来はアイヌ語で『犬』の意味。 斉藤 浅葱(さいとうあさぎ) お嬢様ぶる小市民。 雅の幼馴染で悪友。 音速の拳を持つ高校教師。 祐一の担任。 雅、村上の三人でトリオを組んで高校時代は暴れまわった。 実は近隣最強クラスの神姫マヤアのオーナー。 マヤア タイプ・マオチャオ。 11人斬り。化け猫マヤア。などの二つ名で知られる強力な神姫。 ツガルのレインディアバスターを武器に、変幻自在の戦法を取る。 戦闘時は頭を使うが、平時はおバカ。 名前の由来は琉球語で『猫』の意味。 村上 衛(むらかみまもる) 変態。 雅、浅黄の高校からの友人で神姫フェチのメイドフェチ。 勝てないからと称し神姫を購入し続けること40人。 更にマスターでこそ無いが、マヤア、セタもセットアップや武装の提供は彼が手掛けている。 高性能だがピーキーで扱いづらい改造パーツを作るのが趣味。 馬鹿と天才は紙一重の完全に馬鹿サイド。 過去にカトレアと言う名のアーンヴァルを所有していた。 デルタ(デルタ1) フォートブラッグがベースの改造神姫(外見は完全にフォートブラッグ)。 内部を改造されている結果、通常の神姫よりも遥かに高い演算能力を与えられている。 しかし、そこに容量をとられ、実際の戦闘力は決して高くない。 違法改造とも取れる凶悪なシステム=デルタシステムを有し、実質三倍の戦力を有している。 簡単に言えば、ひとつの自我が三つの身体を有しているようなもの。 どれもデルタ自身であるため連携は完璧で、単機の性能の低さは克服していると言える。 公式戦用の隠し技があり、そちら方がある意味凶悪だとか・・・。 村上シスターズ(むらかみしすたーず) 村上衛の40人の神姫たち(デルタ1含む)。 長女はアーンヴァルである。 実はさらに上にもう一人、姉に当たる神姫が…。 基本的に村上家から離れることは無い。 野生化したのが約一名居るとか居ないとか。 ほぼ全員がメイド服着用。さらに30番台からはボクっ子。 村上の趣味が全開である。 ちなみに姉妹ではないが、マヤアは41番目、セタは42番目に相当する。 ◆土方京子と花の四姉妹 土方京子(ひじかたみやこ) 眼帯の女性。 全ての神姫を破壊する目的で行動しているらしい。 黒いコートがトレードマーク。 夏でも黒いコート。 暑いけど我慢しているらしい。 バイク乗り。 結構ドジ。 初期の神姫開発者の一人であり、特にレーザーとスラスター系の技術に優れる。 現在は最愛の妹の願いを叶えるべく、自分を殺して行動中。 カトレア ジルダリア(プロトタイプ)型の神姫。 装備はジュビジーの装備一式にレーザーソード。 四姉妹の長女で、とある神姫と同じ名前である。 かつては、村上衛の最初の神姫であった。 アルストロメリア ツガル型の神姫。 装備はアーンヴァルを中心にしたフルカスタム。 四姉妹の次女で、言語中枢に破損があるためカタカナとひらがなの発音が変。 ストレリチア エウクランテ型の神姫。 装備はエウクランテのものをカスタムした装備。 四姉妹の三女で、舌っ足らずな幼い喋り方をする。 ブーゲンビリア フォートブラッグ型の神姫。 装備もフォートブラッグが中心だが主兵装は別。 四姉妹の末娘で漢字でのみ喋りたがる。 土方真紀(ひじかたまき) 眼帯の女性、土方京子の妹。 CSCの製作者。 京子に全ての新規の破壊を依頼したらしい。 ちなみに、MMSの素体デザイナーである浅井真紀さまが名前の由来。 そして、同時に真紀=しんき=神姫という言葉遊びも入っている。 幽霊(???) 一番最初の神姫。 黒い衣装と二刀を扱う高速戦闘型神姫。 現在は幽霊として天海の神姫センターに出没している。 現行の神姫としては間違い無く最強の部類。 ◆その他のオーナーと神姫 永倉 辰由(ながくらたつよし) 通称パイソンの辰。 アットホームヤクザこと、伊藤組(美空の家)組長、伊藤観柳斎の懐刀。 堅気の衆には礼儀正しい紳士的な極道。 モンティ・パイソンの大ファン。 プリンちゃんのオーナー。 プリンちゃん シュメッターリング型の神姫。 実戦経験がないので弱い。 戦闘よりもむしろ日常生活のパートナーである。 ちなみに“~ちゃん”までが名前。 過去に違法改造神姫、M6号として坂本を主としていた神姫の成れの果て。 藤堂 晴香(とうどうはるか) 武装劇団を名乗る“人形劇部”の部長。 美空と同じ女子高だが、面識は無かった。 舞薙(マイナ)と歌憐(カレン)という二体の神姫を所有している。 舞薙(マイナ) 怪しい言葉遣いの紅緒タイプ。 稼動時間が長く、かなりの経験を有する神姫。 戦闘経験も豊富で、劇団の殺陣(たて)担当。 どんな物語にも戦闘シーンを入れようとする困ったちゃん。 普通、浦島太郎やシンデレラにチャンバラシーンはありません。 彼女の言葉はフィーリングで書いているので、正確さは求めないでください…。 歌憐(カレン) 舞薙(マイナ)を姉さまと呼ぶイーアネイラタイプ。 強いお姉ちゃんに負けないように頑張る努力家さん。 ちなみに本編には登場しないが晴香の所有する神姫は2人だけで、残りの10名は他の部員の神姫。 作中はきっと修理とかで大慌てしてたはず。 松原 美樹(まつばらみき) 本編未登場。 神姫センターで働くオペレーターのお姉さん。 美人で愛嬌もあり、おまけに巨乳なため、祐一のお気に入りの人らしい。 タカさんを始めとするグラップラップシスターズのマスターでもある。 実は天海神姫センターの店長さん(!!)。 高嶺(タカネ) 本編未登場。 タカさん、おタカさんの愛称で呼ばれるグラップラップ。 別名『武装建機』のタカさん。 部下として11人のグラップラップを従え、バトルフィールドの補修整備を行っている。 フィールドを壊されると怒るが、本人もまた破壊魔である。 グラップラップシスターズ(ぐらっぷらっぷしすたーず) 松原美樹とおタカさんに忠誠を誓う11人のグラップラップたち。 それぞれに名前はあるが、「~号」と、コードネームで呼び合うのが好き。 ちなみにおタカさんは「リーダー」、美樹は「店長」と呼ぶ。 山南 三郎(やまなみさぶろう) 実に極道の子分ちっくな名前を持つ青年。 伊藤組の中堅若集。 実は密かに神姫ユーザーでヴァッフェシリーズの神姫を二体所有する。 最近、正体不明のライバルが出来たらしい。 ???(???) ビューティー仮面。 謎。 ビューティーマスク1号、2号のマスターらしい。 ビューティー仮面さまと呼ばれている。 ???(???) ビューティーマスク1号。 謎。 美しき力の戦士。 ???(???) ビューティーマスク2号。 謎。 美しき技の戦士。 ◆神姫オーナーではない登場人物。 稲造(いなぞう) 伊藤組の食客にして用心棒。 主に伊藤組の敷地内に侵入した不埒者の迎撃を自らに任じている。 幸いにして伊藤組に不法侵入するような輩は今のところ居ない。 居たらとても酷い目にあうことだろう。 ストイックな硬派で武人気質の頑固者。でも情にもろい。 藤堂 奈津子(とうどうなつこ) 晴香の母親にして旅館『季州館』の女将さん。 ショートカットの怜悧な美人さん。 娘を騙す(嘘を教える)のが趣味。 昔は南の島で怪しい研究をしていたかもしれない。 エドワード ベルウッド(Edward BellWood) リーナの父親。 名前の通り、祖先を辿って行くと王族にたどり着く由緒正しい家系。 もちろん現在の英国王室にコネクションがある訳ではない。 根っからのお人よしで世間知らずのボンボン。 リーナの一件を期に会社を立ち上げるがそれがリーナを悲しませることになるとは思っていなかった…。 現在は、規模を縮小した会社の経営者として適度に忙しい日々を送っているとか。 最近の悩みの種は、リーナが一緒にお風呂に入ってくれなくなった事。 芹沢 九十九(せりざわつくも) 神姫の初期開発に携わった科学者。 某大学で教鞭を取っていた事もある。 眼帯さんに追われる身となり逃走するが、現在はとある都市にて隠居中。 派手なアロハシャツを颯爽と着こなし、ビールとヒレカツが大好物だと公言して回る元気なおじいちゃん。 たぶん100までは余裕で生きる。 原田 大介(はらだだいすけ) 捜査四課、暴力団対応の刑事で荒事のプロ。 でも極道の辰由と職業理念を超えた友情で結ばれている。 ダメじゃん!? それって癒着!? でも気にしてない不良刑事。 近藤勇斗(こんどうゆうと) 天海中央病院に勤務する医者。 実は変態。 本当は産婦人科に勤務したかった。 ダメなら小児科。 それでもダメなので精神科に居るとか、なんとか。 結構ダメ人間。 いつか患者を10万馬力のサイボーグに改造したいという、危険な夢を持つ。 もちろんミサイルは内蔵する。 トコロで、村上、芹沢(九十九)、近藤、伊藤(観柳斎)、ビューティー仮面、〇〇〇○〇〇〇〇〇(←未登場)、〇〇〇和尚(←未登場)を合わせて天海変態七神将と呼ぶ。 芹沢香苗(せりざわかなえ) 天海中央病院に勤務するナース。 この作品はフィクションなので看護婦である。 看護師など存在しねぇ!! 近藤の暴挙に応戦し、日々患者をセクハラから守る正義のナース。 芹沢九十九の孫。 元スケバン。 松原 臣士(まつばらおみし) 誰だこれ? いまさら美空にアーンヴァルを売った、おもちゃ屋の店主とか言っても分からない。 現在は、あのおもちゃ屋は店を畳んでおり、彼は気楽な隠居暮らしに突入している。 娘の就職先である神姫センターに入り浸り、とある紅緒型(マイナの事)と囲碁など打って遊んでいるとか…。 ◆敵キャラ。 坂本 竜弥(さかもとたつや) 違法改造された武装神姫による闇バトルを開催していた青年。 闇に咲く花の一件にて辰由の手で警察に引き渡されたが、法的な罪自体はさして重いものでもないため、現在(本編開始時)はすでに出所しており自由の身である。 もちろん反省するような性格ではないので、今もどこかで復讐の機会を伺っている筈。 この作品唯一の悪人。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1002.html
ep01 飛鳥ちゃん誕生 ※このシリースには今後18禁の描写が出てきます 『私』の意識が覚醒する 今まではセットアップ用のプログラムに支配されていたが、それは役目を終え、本当の私が起動する 目の前には20台前半くらいの男の人がいる この人が私のマスター これから長い神姫道を一緒に歩むパートナー …もうちょっとカッコイイ人がよかったな… 等と考えてもしょうがない 私の使命はこの人に勝利を捧げる事 間垣海洋研究所がその技術の総てを結集させて作った私には雑作もない事だ 「…あれ?おかしいな?」 …っと、ちょっと考え事をしすぎたようだ 私は『私として』の初めての言葉を、目の前の人にかける 「おはようございます、マスター」 「あ、動いた。よかったぁ~」 どうやらいらぬ心配をかけてしまったようだ 「それではマスター、私に名前をお与え下さい」 「名前はもう決めてあるんだ。君の名前は『飛鳥』だ」 「アスカ…了解しました。この名に恥じぬよう、マスターに尽くしたいと思います」 「そんなに気張らなくてもいいよ。ウチはマッタリ派だから。あ、勿論バトルしたいってならちゃんとサポートしてあげるよ」 「ご安心下さいマスター。必ずやこの最新型の私がマスターに勝利の栄光をもたらして見せます」 「こら飛鳥、バトルってそんなカンタンなモンじゃないぞ」 「大丈夫です。この飛鳥、セイレーン型の誇りに賭けて必ずや…」 「ちょっとまて飛鳥、今なんつった?」 「はい、大丈夫です、と」 「いやその後」 「セイレーン型の誇りに賭けて…」 その言葉を聞き、バッと私が入っていた箱を掴み、パッケージを見る 「…しまったぁ」 「…何か問題でも?」 この慌てぶり、一体何があったのだろうか? 「いや、大したことじゃない、大したことじゃないんだが…その…スマン」 いきなり私に謝るマスター 「何か不都合でも?」 「いやその…ずっと「鳥型神姫」だと思ってたもんで、鳥っぽい名前付けちゃった…」 「はい?」 「すまん!今までみてた掲示板だと、ずっとエウクランテの事を鳥子って書いてたもんで!」 ちょっとショックを受ける私 「まー許してあげてよ。コウちゃん、良い名前ないかなーって、ずっと考えてたんだから」 不意に別の所から女の子の声が聞こえてきた しかしこの部屋にそれらしき人影は見えない 「あっ、こら美孤、急に出て来るんじゃない」 ひょこん 物陰から現れたのは小さな小さな女の子-神姫であった 「えへへー、あたしの名前は美孤。よろしくね、飛鳥ちゃん。わーい♪可愛い妹が増えた~」 スっと手をのばしてくる彼女 -データベース照合- 彼女はマオチャオ型神姫と判別 フリフリのドレス-メイド服と言ったか-を纏った、ごく普通の神姫のようだ 「飛鳥、でいいです。私も貴方のことをミコと呼びますから」 「ふえ?」 「私はマスターに勝利を捧げる為にここに来たのです。貴方の様な愛玩用神姫とは違うんです」 「こら飛鳥!姉に向かってその暴言はなんだ!」 マスターが怒りの声を上げる 「申し訳ありません、マスター」 私はマスターに謝罪した 「…謝る相手が違うんじゃないか?」 「いいよ、コウちゃん。私は気にしてないから」 ニッコリと微笑みながらマスターを宥める美孤 「…どうしたんですか、ご主人様?」 ヒュゥと軽い音を立てて一体の神姫が飛んできた -データベース照合- アーンヴァル型神姫と判別 標準的な武装を付けた神姫のようだ こちらはバトル用なのだろうか? 「あのマスター、こちらのかたは…?」 「初めまして、私はアーンヴァル型神姫のエアルといいます」 マスターが答えるよりも早く、彼女が答えた 「エアル、さんですね、私は飛鳥といいます。以後宜しくお願いします」 「…なんか随分、美孤の時と態度が違うな…」 「それよりエアルさん、この家のバトルトレーニング施設はどこにあるのでしょうか?」 「あ、えっと…」 チラっとマスターの方を見るエアル マスターははぁーっとため息を付きながら 「しょうがない、エアル、案内してやってくれ」 「解りました。では飛鳥さん、行きましょう」 私はエアルと共に、訓練施設へと向かっていった 「はぁーっ、なんか大変な娘みたいだな」 「でもコウちゃん、素直な子みたいだよ」 「しっかし、お前のことを完全にバカにしてるぞ」 「別に気にしてないよ?」 「ははっ。もしお前の実力を知ったら、さぞかし驚くだろうな」 「うーん、やっぱ少し心配かな。自信があるのは良い事だけど、なんか自分の心に嘘付いてるみたいだから」 「どういうことだ?」 「武装神姫はこうじゃなきゃいけないって思ってるみたい」 「といっても、言って聞きそうもないよなぁ…」 「ふふ…そんな時は、コレで語るんだよ」 そう言って、グッと拳を掲げる美孤であった
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1595.html
姫の閉ざされし檻、呪われし高貴(その二) 第三節:賢者 半ば日が中天に差し掛かる頃、私達はアキバへと帰ってきた。昼食さえも 摂る時間を惜しみ、駅の売店で買った栄養補助食品とスポーツ飲料を皆で 分け合いながら、神姫センターへと赴く。連休も明けて暫く経った平日の センターは、多少賑わっていた物の……混雑という程の人は居なかった。 「ふぅむ……緊急充電用のレンタルクレイドルは、どれも正常だな……」 「ん~……電源ケーブルが何処かへ引っ張り出された跡も、ないですの」 「となると、ロキちゃんは一体何処で充電しているんでしょうね……?」 「……ひょっとして、充電が不要な位のジェネレータを積んでるのかな」 一緒になってクレイドル周辺をまさぐる梓から、そんな推論が飛び出す。 しかし、強ち的外れとも言えない事情がある。それは、彼女の躯に備わる “装備”だ。可変式の高速電磁浮遊ウィングに、プラズマで固めた武装。 いずれも、莫大な電力がなければ満足に運用出来ない筈なのだ……だが。 「ロキは、平然と動き回っていた。有り得ない話ではないかもしれんな」 「あ、あのー……お客さん?そんな所でしゃがんで、お探し物ですか?」 「……あ、うん。スペーサーを落としたんだよ。でも、見つかったもん」 「気を付けて下さいね?センターではそういうの、賠償できませんから」 流石に不審だったのか、店員が私達に声を掛けてくる。ここでこれ以上の 捜索は無理かもしれぬな……。しかし何らかの形で補給をせねば、いくら 優秀なジェネレータでも限界はある。何処かで、ロキは補給をしている。 それは間違いないのだが、此処に今居ないとなると……何処にいるのだ? 私と梓はベンチに腰掛け、深く溜息をつく。痕跡さえ、見つけられない。 「うぅむ、参ったな。ここで補給しているとばかり思ったのだが……」 「他のセンターで、補給しているかもしれないんだよ。行ってみる?」 「でも、雰囲気悪かったり入った事無いセンターは捜索出来ませんの」 「そう、ですよね。ここでさえ、全てを把握している訳じゃないです」 馴染みの深いこのセンターで何も見つけられない、となると。私の往く 活動範囲には、最早探索できる場所は殆ど無いとも言えるだろう……。 途方に暮れるとはこの事か……?皆で、溜息をついた。その時だった! 「心配はいらないよ、小さなレディ達……奴は確かに、ここで補給した」 「何ッ!?き、貴様は……前田、そして“アラクネー”ではないかッ!」 「こんにちは。まさか、こんな形で再会するとは思わなかったけどね?」 私の眼前に、一人の男と一人の神姫が現れたのだ。“自衛官の”前田と、 “女郎蜘蛛の”アラクネー。何故神姫バトルをしているのかさえ不明な、 謎の多い連中……そして、クララの初戦を務め彼女を導いた“賢者”だ。 知らず知らずにクララ……いや、梓の躯が緊張する。未だ、彼女にとって 尊敬するべき“師”なのかもしれん。だが、彼らの雰囲気は剣呑だった。 「前田さん、アラクネーさん……お姉ちゃん達から、噂は聞いてるよ」 「ふむ、某とクララの仲を知っているのか……ならば、問題はないな」 「そうみたいだね。で、何かお探しなのかな?小さなお嬢さん達……」 「……惚けるな前田よ。貴様は今、確かに言ったろう。“奴”とッ!」 私は、自然と前田を睨む。喰えない男だとは思っていたが、今こうして 微笑みながら向かいのベンチに座る奴を見ていると、尚更分からぬな。 自衛官という立場上、何か知ってるのかもしれんが……どういう事だ? 「ああ、そう言えばそんな事を言ったね。僕もうっかりしていたよ」 「どう考えても、私達の探している者を知っているという態度だな」 「はは……出来れば、違っててほしいんだけどね。で、何だろうね」 梓に視線を移す。鷹揚に笑いかけ、世間話を始めようかというこの男に、 全てを話していいものか。私だけの判断では、どうにも雲を掴む様でな? 尤もロキの手懸かりその物が、既に雲を掴む様な状況になりつつあるが。 しかし暫し迷い、梓は肯いた。“クララ”として、彼らを信頼したのだ。 アルマとロッテも、二人の胸元で肯く。となれば、黙っている事もない。 「……探しているのは神姫だ。否、厳密には神姫と呼べぬかもしれん」 「北欧からやってきた、哀しい定めを背負った一体のMMSですの……」 「ひょっとしたらまだ秋葉原にいるかも知れないって、思ったんだよ」 「だから、その。探してたんですけど……そういう貴方達は、何を?」 前田は深く溜息をついてから、アラクネーを促した。この世の終わりでも 来たかの様なオーバーアクションを確認し、小さな神姫が重い口を開く。 それは私達にとって……そして彼女らにとっても、望まざる展開だった。 「某らが追い求めるは、“ハザード・プリンセス”の零号機に他ならぬ」 「“戦略級殲滅型MMS”って分類の、中規模破壊を行うテロ用兵器かな」 「神姫の皮を被った怪物、それこそが……“国家の敵”たる人形なのだ」 ──────世界はやっぱり、残酷なんだよ。 第四節:信念 自衛官の前田と、彼の神姫たるアラクネーから出た言葉。それは正しく、 最悪の運命が間近に迫っている事を告げる、“賢者の忠告”に他ならぬ。 「テロ用の兵器、人形……だと?貴様、知っているのか……ロキを!」 「知っているよ。僕らの任務は、アレを追いつめ無力化する事だから」 「どうしてですか!あの娘は、マスター達の為にやっただけなのに!」 アルマが梓の胸から乗り出し、泣き叫ぶ。助けようと思った存在が、既に 国家という巨大な“モンスター”から目を付けられているという現実に! それは既に、ロキが『“世界の敵”として認識されている』事にもなる。 「存在自体が、極めて危険なのだ。国家という“大を救う”べき者には」 「彼女の存在その物が、罪でしかないんだよ。そこに在るだけで、拙い」 「故に何としても、彼女を無力化せねばならない。破壊してでもな……」 『存在その物が罪』。この世に産まれ出る者にとって、理不尽の極みとも 言える断定であった。それが器物であろうと……神姫であっても、そこに “心”がある以上、これを理不尽と言わずに何というのか。だが同時に、 国家を……民衆を護らねばならぬ者からすれば、ロキは正に害悪である。 「それが、日本って言う国の考え……でいいのかな?前田さん……?」 「構わないよ。ついでに、日本と繋がる主要な国家の考えでもあるね」 「……驚いた。既に世界規模で指名手配されているのか、ロキは……」 「当然であろう、マスター……晶殿。彼女は、“ラグナロク”の残党」 「僕らもつい先日、逮捕したエージェントの自白で知ったんだけどね」 「捕まったんですか、運び屋さん!?……まさか、彼女を棄てたから」 前田は軽く溜息をついてから、肯いた。あの爆破はやはり“事件”として 警察とは別の治安組織が追っていたのだ。ロキを追う過程で、彼女を運び 秋葉原で棄てていった運び屋の存在が、露呈したのだろう。些か現実味に 欠ける話ではあるが、それでも認識せねばならない……事の重大さをな。 「僕らには、上の命令に従ってロキを無力化するという責務があるんだ」 「その為に……無闇に関わろうとする部外者は少ない方が良い、となる」 「だったら、なんですの?わたし達を傷つけて、国の為に封じますの?」 だが、それよりも早く……身を弁えるという理性的な選択より早く、私の 胸元から“感情”に満ちた声が響く。それこそ、黙って前田達の言い分を 聞いていたロッテの声だった。それは、怒りと哀しみに満ちた音である。 「ロッテ君、だったかな。君達を捕まえたり、傷つけるつもりはないよ」 「ただ……そなたらの介入でロキを逃がす事になっては困る、とな……」 「だったら、わたし達が自己責任でロキちゃんを止めればいいですの!」 啖呵を切るロッテに、前田が目を見開く。この反応は、予想外らしいな。 それは、全てを敵に回してでも助けたいという“信念”故の叫びだった。 アラクネーが睨め付ける様に、アルマと梓……更に私を見据える。それは 幾多の死地を潜ってきた主に引けを取らぬ、一種独特の凛とした気配だ。 「万一そなたらや主に危険が及んでも、何の救済も受けられぬのだぞ?」 「……保険を申請しても、事実は隠蔽されるから保証されないんですね」 「そう言う事、だね。秘密裏に全てを終わらせたい。それが上の考えさ」 「話を聞いてて気になったけど、“破壊”は義務じゃないのかな……?」 「執るべき手段の一つであって、確定事項ではない。無力化こそが重要」 しかし己を譲らないロッテに気圧されたのか、アルマと梓も食い下がる。 ここで自分だけ荷を擲つ事は、“姉妹”として考えも及ばぬのだろうな。 二人の事実確認を受けて、ロッテは続けた。それは、私の考えでもある! 「なら……ロキちゃんが破壊を止めて普通の神姫になれば大丈夫ですの」 「普通の、神姫に?……確かに、神姫の因子を持つ相手だが……無謀だ」 「無茶でも無謀でも、そうなれば国家として敵視する道理はあるまい!」 「ま、そうだけどね。僕としても命令は果たせる。でも、いいんだね?」 それは国家の代行者として『失敗した時は私達を見捨てる』という言外の 意味を含んだ、最終確認だった。本当に、私達は後に退けぬ事へ関わって しまったのだ……しかし、それを悔いるのは全てが終わってからでいい! 「いいですの!わたしは……ロキちゃんを必ず救うと決めましたの!」 「はぁ……参ったね。ここで退いてくれた方が、堅実だったんだけど」 「主よ、最早言っても聞いてはくれますまい。やらせてみては如何か」 がっかりした、という様なアクションをしつつ前田は肯き、立ち上がる。 最早、大っぴらに助けを借りる事は出来ない。私達の力で、なんとしても ロキを“日常”へ引き戻してやらねばならぬ。僅かの失敗も、赦されん! 「小さなレディ達、出来れば……僕らに手間を掛けさせないでくれよ?」 「無論そうする。何処の所属かは聞かぬが、本拠で報せを待っていろ!」 「そなたらは不器用すぎる。だが、そういう生き方も嫌いではない……」 「……恐れ入るんだよ、アラクネーさん。でも、必ず成し遂げるからね」 「あたし達には、それしか出来ませんから……きっと、助けてみせます」 「“武装神姫”の意地にかけて、絶対にやってみせますの……絶対ッ!」 ──────想いの力は余りに強く、皆を震わせるんだよ。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/112.html
武装神姫達のソード・ワールド2.0【第2-2話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm19081331 クーガのステータス 魔物データ/クーガ なお、本来なら『骨組みだけの試作品で、稼働していることは稀』という設定。 なのだが、メカニックな雑魚敵として手頃なデータではある。 グルガーンのステータス 魔物データ/グルガーン